森の入り口に立った私は、そこに広がる青々とした木々の中に、太陽の光が射し込み、幻想的な光景が広がっているのを見て、息を呑んだ。

そんな森の中へと続く階段の脇には、少し(こけ)のついた灯籠が等間隔で立ち並んでいる。


私はまるで惹き込まれるように森の中へと続く階段を踏んだ。森の中は、ひんやりとした涼しさがあった。

そして一段、また一段と階段を上っていく。

「あ、祠!」

三十段ぐらい上ったところで、視界の端に祠が映る。

それが百合香が話していた噂の祠だと思い、次の段を踏もうとしていた足を止めて、鞄から手紙を取り出し祠の前に置いた。


すると、アブラゼミがやかましく鳴き始め、人でいっぱいになった部屋に詰められたような息苦しさと、もわっとした空気が身体に纏わりつく。

私の不快指数は急激に上昇した。

夏なんて大嫌いだ、やり場のない苛立ちをどうすることも出来ず、私は足早にその場を去った。