淡い月を愛していたい

*・*


「四丁目の白巖山…四丁目の」

自分に言い聞かせるように、ぶつぶつと呟いて
もう!このマップ全然役に立たないじゃん!と、心の中で叫んだ。

スマホのマップを頼りに、百合香に言われた四丁目にある白巖山の前に来ているのだが
山が大きすぎてどこが入り口なのか分からない。

どうしよう、引き返して別の日に百合香と来ようかな。

でも、せっかくここまで来たのにわざわざ別の日に来るのもなぁ…。

どうしようかと、その場で立ち尽くして悩んでいると「お嬢ちゃん、そこで何してるんだい?」

後ろから突然声をかけられて、肩が少し跳ねる。

後ろを振り向くと、そこには手押し車に毛糸で編まれた帽子を被り、夏にはそぐわない長袖の服を着たおばあさんが立っていた。