淡い月を愛していたい

「ちょっと、なんで私の名前で書くの?!」

「えぇ、だって手紙出して呪われたりしたらいやじゃん?」

さも当然かのように、話す百合香に困惑しながら「私が呪われてもいいんだ……」と、恨みがましく
でも、空気が悪くならないようにおどけた声で言った。


「あかり、そういうの信じてないんだから、別にいいでしょ?」

そう言われてみれば、そうだ。

呪いなんて、子供を揶揄うための嘘なのだから。私の名前で書かれても別に問題は無い。

「まぁ、確かにそうだわ。いいよ、私の名前で書いて」
「で、その手紙いつ出しに行くの?」

そう言った私に、満足げに百合香は微笑む。

「わたし今日部活休みなの、だから放課後に出しに行こ!」
「わかった、放課後ね」


放課後、白巖山へ行く約束を交わした私たちは来週のテストに向けて勉強をし始める。

結局、小林先生が国語の授業時間内に私たちの教室へ戻ってくることはなかった。