余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

 彼も俺に気づいて軽く手を上げ、一歳半くらいの息子と手を繋いだ伊吹さんも笑顔を見せた。

「こんばんは。明神先生もいらっしゃってたんですね」
「ああ。妻共々、あんまりこういう場は好きじゃないんだが、息子の可愛さを皆に見せたくて」
「久夜さん、正直に言いすぎ」

 淡々とした先生に伊吹さんがツッコむものの、ふたりの子供は本当に可愛い。小さな手を伸ばしてくる彼とタッチして、顔の締まりがなくなってくるのを自覚しながら、「先生がすっかり子煩悩になったのもわかります」とこぼした。

 天乃も挨拶をして、伊吹さんに抱き上げられた男の子に〝いないいないばあ〟をして遊んでいる。子供と関わっている場面を見ると、どうしても自分たちの理想の未来を想像してしまう。

「めちゃくちゃ笑ってくれる~。人懐っこくて本当に可愛いですね」
「私はすごい人見知りだから不思議なんです。誰に似たんだろう、この子」

 そう言って笑う伊吹さんと、楽しそうに話す天乃を微笑ましげに眺めていると、明神先生が少し顔を近づけて囁く。

「彼女だったんだね、芹澤先生にとっての〝高嶺の花〟は」

 先生までもが俺の片恋事情を知っていたのかと驚きつつ、苦笑を漏らして「そうです」と認めた。彼もふっと口元を緩め、天乃に視線を向けて続ける。