余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

 この関係を本物にしたいとなおさら強く思っていると、院長はやや声を潜めて俺に向かって言う。

「さすがにりほも観念しただろう。芹澤くんのことは諦めるはずだ」
「お父さん、私のことを言ってるでしょう」

 静かに食事していたりほさんがすかさず入ってきて、俺たちはギクリとする。じろりと目線を送られた院長は、怯えたように肩をすくめて「地獄耳……?」と呟いた。

 淡いすみれ色のパーティードレスを纏った彼女は、食事する手を止めて憂いを帯びたため息をこぼす。

「今、なんとか諦めようとしているところよ。これでも反省してるの。婚約者さんがいるのに、私なにやってたんだろうって。マウントを取られても仕方ないわよね」
「マウント?」

 院長と夫人が首をかしげ、天乃はきっと冷や冷やしているだろう。皆まで言わなくていいっていうのに、このお嬢様は……。まったく悪気はなさそうなので、天乃の言う通り天然なのだと思うが。

 一瞬口の端を引きつらせた天乃だったが、自分からりほさんのほうに歩み寄り丁寧に頭を下げる。