余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

『いいんだよ、私が娘を甘やかしすぎてしまうのがいけないんだ。女房にも〝余計なことするんじゃない!〟って叱られたよ』

 こちらも謝罪したものの、院長は気にせず自分に苦笑していた。

 家族の女性陣の前だと弱くなってしまう彼は、人間味があってそこがまたいい。心臓外科の権威と言われるほどの名医でありながら、奢りもせず謙虚さを失わない素晴らしい人だ。

「お疲れ様です」といつもの挨拶をしてから、院長と夫人の前で天乃の腰にそっと手を回し、先ほどから何度も口にしている言葉で彼女を紹介する。

「彼女が私の、誰より大切な人です」

 俺は今日、あえて婚約者とは言っていない。皆を欺いていることに違いないが、この言葉は本物だ。

 天乃は俺の本心だと気づいていないだろうが、少し照れた笑みを浮かべて会釈する。

「はじめまして。清華天乃と申します」
「天乃さん、会えて嬉しいよ。芹澤くんは本当に優秀な医者だから、家庭でも支えてあげてください」
「今度ぜひウチにも遊びにいらして。ドクターの奥様とはよく交流してるの」

 和やかな院長と夫人にそう言われた彼女は「はい。ぜひ」としっかり返事をしていたものの、わずかに複雑そうな表情をかいま見せたのが俺にはわかった。本当に結婚するわけではないと思っているのだから当然だ。