余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

 その日は比較的簡単な手術だけだったので定時に上がり、天乃の会社まで迎えに行った。帰り道に一緒に買い物をして、料理もできることを手伝う。

 数十分後には、俺が見よう見まねで包んだ不格好な餃子と、天乃が包んだ売り物みたいな出来のそれがテーブルの上に並んだ。

 ぎこちなさなどは一切ない楽しい時間で、俺の不安は杞憂に終わった。キスについてはお互いに触れなかったが、今日の目的は普通に過ごすことだったので、彼女が無理して俺と会っていないと感じられただけで十分だ。

 そして、天乃の言っていたことがよくわかった。特別なことをしなくても彼女の隣にいるだけで──好きな人を笑顔にしてあげられるだけで、本当に幸せだと。


 迎えたパーティー当日。俺は久しぶりにスーツに身を包んで天乃を迎えに行く。

 一応彼女の両親にも挨拶をしようとインターホンを押すと、目元がよく似ているお母さんが笑顔で現れた。

「やだ、夏くん久しぶり~!」
「ほんの数回しか会ってないのに友達ぶるのやめよ?」

 胸の前で両手を振るお母さんの後ろから、天乃が呆れ顔でツッコむ。

 確かに彼女と会ったのは、皆で遊んだ後天乃をここへ送ってきた時の二、三回くらいだ。その時から変わらずフレンドリーで楽しい人だなと、俺も笑って「ご無沙汰してます」と会釈した。