当時二十七歳だった俺は、専門医の資格を取得する目前で他のことには構っていられなかった。その前の年はアメリカに留学していたし、仮に告白していたとしても現実問題うまくいかなかっただろう。
天乃が幸せならそれでいい。そう思っていたのだ、つい数日前までは。
「でも、天乃が『婚約者のフリをする』って言ったことで、今好きなやつはいないと確信した。だったら俺のものにしたい、って気持ちが急に湧いてきて。ズルいやり方だけど、偽りでもいいから近い関係を作って、それが終わる前に俺のことを本当に好きにさせてやろうって決めたんだ」
胸に押し込めた恋心は、奥のほうで火種としてずっと残っていたのだ。愛しい彼女が風を吹き込んだことで一気に再燃したそれは、以前よりもさらに強く燃え上がっている。
偽装婚約なんて、皆を欺いている不誠実な方法だと重々承知している。俺たちの関係を本物に変えることができず、嘘だとバレた際には信頼が落ちるのももちろん覚悟の上で、天乃を手に入れるためのチャンスを掴んだ。
一人前の医者としてひとり立ちした今なら、彼女に悲しい思いをさせない自信がある。ふたりで幸せな家庭を作りたいという、絶対に無理だと諦めていた願望も芽生えている。だからどうか、俺を選んでほしい。
天乃が幸せならそれでいい。そう思っていたのだ、つい数日前までは。
「でも、天乃が『婚約者のフリをする』って言ったことで、今好きなやつはいないと確信した。だったら俺のものにしたい、って気持ちが急に湧いてきて。ズルいやり方だけど、偽りでもいいから近い関係を作って、それが終わる前に俺のことを本当に好きにさせてやろうって決めたんだ」
胸に押し込めた恋心は、奥のほうで火種としてずっと残っていたのだ。愛しい彼女が風を吹き込んだことで一気に再燃したそれは、以前よりもさらに強く燃え上がっている。
偽装婚約なんて、皆を欺いている不誠実な方法だと重々承知している。俺たちの関係を本物に変えることができず、嘘だとバレた際には信頼が落ちるのももちろん覚悟の上で、天乃を手に入れるためのチャンスを掴んだ。
一人前の医者としてひとり立ちした今なら、彼女に悲しい思いをさせない自信がある。ふたりで幸せな家庭を作りたいという、絶対に無理だと諦めていた願望も芽生えている。だからどうか、俺を選んでほしい。



