余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

 そういえばあの時も、秋奈が『兄貴に天乃の可愛い姿を見せつけてやろー』と言って、私とのツーショットを送っていたっけ。でも〝お父さんみたいな心境〟って……やっぱり女性としては意識していなかったみたいだよ、秋奈。

 六年前のことを思い出して苦笑を漏らすも、夏くんの顔からはゆっくり笑みが消えていく。

「その写真を見た後、ちょうど二十歳になったばかりの女の子を看取った。悪性の脳腫瘍があって、『成人式に出るのが目標だ』って言って頑張っていたのに、それは叶えられなかった」

 私の心臓と、夜空に高く上がった花火が、同時に大きな音を立てた。鎮魂の意味を持つそれが華やかに広がり、彼の綺麗な横顔を照らす。

「今、がんは治る時代だってよく言うだろ。でも、グレードの高い悪性脳腫瘍はそうはいかない。俺が今まで見てきた患者さんにも予後がいい人はいないし、腫瘍を完全に取っても遅かれ早かれ必ず再発する」

 彼の口から淡々と語られるのは、苦しい現実。

 今の医療では、悪性度の高い脳腫瘍に対しての治療には限界があり、近い未来の死は避けられない。それは私でも知っている。自ら手術を行う彼にとったら、どれだけ悔しいことか。