余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

「勝手な思い込みで彼女を困らせないでもらえますか? まだグダグダ言うなら、そこの交番でカタをつけさせてもらいます」

 顎で交番のほうを示す彼に、男性はさすがにまずいと思ったのか一歩後退りし、そのまま身を翻して足早に去っていった。誤解が解けたのかはわからないが、とりあえず一件落着してほっとする。

「なんだったんだろ、あの人……」
「パパ活かなにかだろうな。顔も知らない若い女性と会うっていったら」
「あ! 顔合わせとか言ってたし、そうかも」
「おおかた女性のほうが直前で気が変わって、ちゃんと連絡もせずドタキャンしたんじゃないか」

 あの男性の言動からして、それが一番しっくりくる。かなり動揺したけれど、夏くんが来てくれてよかった。

 彼を見上げて「ありがとう」と微笑むも、彼は眉尻を下げた申し訳なさそうな表情に変わって私に向き直る。

「遅くなってごめん! 予想以上に手術が長引いて」
「やっぱりそうだったんだ。いいんだよ。手術、無事に終わってよかったね」
「よかったけど、よくない。危うく天乃が連れ去られるところだった」

 彼はいまだに焦燥が残っているような調子で、私の手を取る。

「もう絶対、離さないから」

 手を繋ぎ、真剣な瞳を向けてそう言われ、胸が高鳴った。