余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

 母はおはしょりを直し、鏡越しに私を見つめて微笑む。

「天乃が好きになった人に、天乃の可愛い姿を見てもらえて嬉しい。そういう相手ができたこともね」

 なんだかしんみりとした口調で言うので、ほんの少しセンチメンタルな気分になる。私の幸せが母の幸せなんだなと、ひしひしと感じて。

 憂いを帯びた表情になる私に、母は明るく笑いかける。

「夏くんなら安心して天乃を任せられるわ。楽しんでらっしゃい」

 母に偽装婚約の話はもちろんしていないけれど、夏くんがどんな人かは知っている。それと、私の恋心も。

 ちょっぴり恥ずかしくなりつつ、快く送り出してくれる母に「ありがとう」と心から感謝した。

 約束の午後七時、向かった先は横浜駅の交番前。交通規制がかかるので車移動はやめ、白藍から近いここで待ち合わせることに決めた。

 普段から人の多いこの場所は、今日は花火大会のせいでさらにごった返している。が、なにかあってもすぐに交番に飛び込めるので安心感はある。夏くんからもそうするようにと口酸っぱく言われているし。

 花火が始まるのは七時半から。夏くんもお腹が空いているだろうし、もし屋台が出ていたらなにか食べようかな、と子供みたいにワクワクして彼を待っていた。