余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~


 花火大会当日、秋奈の助言通りに母が昔使ったという浴衣を借り、着付けもしてもらった。紺色に大判な椿の柄が入っていて、結構前のものだがレトロで可愛い。大人っぽいデザインでもあるので浮かなそうだ。

 髪は後ろでお団子にして、バレッタで留めたアップスタイルにしている。不器用なので、ヘアアレンジは簡単なものしかできないのが悲しいところ。

 そんな私の後ろで辛子色の帯を締め、満足げにする母が姿見に映っている。

「天乃がいつこの浴衣を着てくれるかなって待ってたのよ。よかったわ~箪笥の肥やしにならなくて」
「着る機会なんてなかったからね。わりと似合ってるんじゃない?」

 いろんな角度から姿を確認して自画自賛すると、母もうんうんと頷いて「さすが私の娘」と言い、いたずらっぽく笑った。

 そして目線を宙に上げ、懐かしそうに目を細める。

「私もこれを着てお父さんとデートしたの。たくさん可愛いって褒めてくれてね~」
「はいはい」

 いつまでも新婚のごとくのろける母を、呆れた笑いをこぼして適当にあしらう。両親はとても仲がよくて、私や弟が思春期の頃はちょっと複雑な気分になったけれど、今では本当にいい夫婦だと思っている。