余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

 この向こうにはいつも綺麗な夜景が広がっているが、今は水滴で滲んでいて見えない。自分の未来を表しているかのようだな……とぼんやり眺めていた時、夏くんも背後からやってきた。

「雨か。結構降ってるな」
「そんな予報だったっけ。傘持ってきてないや」

 そういえば、今朝は天気予報を見た覚えがない。毎朝ニュースでチェックするようにしているのに。

「ここで雨宿りしていればいい。まあ、車で送るからあんまり関係ないけど」

 すぐ後ろで穏やかな声をかけられ、胸が温かくなった。

 もう話は済んでしまったし帰らなきゃいけないと思っていたから、まだ一緒にいられる理由ができて嬉しい。それに、最初から帰りは送ろうとしてくれていたみたいだ。

「優しいね、夏くんは」
「たっぷり甘やかすって言っただろ」

 甘めの声がくすぐるように響いて、耳がほんのり火照る。今の言葉が偽りの婚約者に対するものであっても嬉しい。

 私にはこれで十分。雨で滲んだ景色さえも輝いて見えるから。この関係が終わるまで、ずっと幸せな夢を見させてほしい。