余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

 ドキドキしまくって俯いていると、りほさんがわなわなと震える手を口元へ持っていくのに気づいた。

「じゃあ、私には可能性は一ミリもないということですか……?」
「俺は最初からずっと断っているはずだよ。あなたは本気にしていなかったようだけどね。思い込むとまっすぐ突っ走ってしまうところがあるみたいだから、気をつけたほうがいい」

 冷静に諭す夏くんは、完全に塩対応。明らかにショックを受けた様子のりほさんが、重そうな口を開く。

「……だって、先生に女の影なんてなかったじゃないですか。自分にも可能性があるって、信じていたかったんです」

 じわっと涙を浮かべ、ぽつりと呟く彼女の気持ちもよくわかる。罪悪感を抱いていると、彼女は力なくうなだれて「先生って案外説教臭いんですね……さようなら」と涙声で告げた。

 肩を落としたままこちらを見ずに足早に去っていくりほさんを、なんとも言えない面持ちで見送る私たち。

「説教臭いって言われた」
「たぶん天然なんだよ、りほさん……」
「まあ、これで諦めてくれればいいけどね。俺は本当のことを言ったまでだし」

 夏くんはへらりとした調子でそう言った。私と結婚するとかいうくだりは全部デタラメのくせに、と口の端を引きつらせていると、彼は肩を抱いたまま私の顔を覗き込んでくる。