──翌年の三月、蕾が膨らんできた桜並木を見下ろせるオフィスで、私は以前と変わらず営業のサポートをしている。
デスクに座っている部長に頼まれていた資料を渡すと、彼は「ありがとう」と受け取り、晴れ晴れとした笑顔で私を見上げる。
「清華さんが提案したケトン食、商品化の話が進んでるよ。施設でも結構需要があるらしい」
「本当ですか? ありがとうございます!」
いいニュースに、私はぱっと表情を明るくしてお礼を言った。
ケトン食というのは、糖質を控えて脂肪を増やす食事のこと。治療困難な脳腫瘍に対しても、これを続けることでがんの増殖を抑えられることが報告されているのだと後々知った。
ケトン食を作るのはなかなか手間がかかるので、商品化すれば助かる人がたくさんいるのではないか。部長を通してそう提案したら、開発部のほうも乗り気になってくれたらしい。
「君もチームの一員になって協力してもらうだろうから、今後ともよろしくな」
「はい。よろしくお願いします」
どこか誇らしげにする部長に、私は姿勢を正して頭を下げた。
自分が提案したものが認められたのもそうだけど、誰かのためになるものを作れるって嬉しいな。夏くんに報告したら、彼も喜んでくれるかも。



