余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

「指輪……」

 それは俺があげたものだろうか。入院中はつけられないが、お守り代わりにしたいからケースに入れて持っていると言っていた。そんなに大事にしてくれているのは嬉しいが、確かに泣くほどだと少し心配になる。

「やっぱり明日の手術が不安なのかもな」

「それもあるんだろうけど、指輪をケースから出した記憶がないのも怖いみたい。ちょっと前の話をしても覚えてないところがあるし、メッセージも誤字脱字が結構あるのよ。なんか、だんだん天乃が天乃じゃなくなっちゃうような気がして……」

 秋奈は言葉を詰まらせ、ふいに泣きそうな顔になる。

「あの子、なんにも悪いことしてないじゃん。のうのうと生きてる極悪人もいるのに……なんで天乃なの?」

 声が震え、瞳にみるみる涙が溜まっていく。秋奈もきっと、自分でいろいろと調べて不安になっているのだろう。

 俺も、どの患者に対しても同じように考えてしまうし、神様なんていないのだと思い知らされることばかりだ。天乃がこうなってからは、これまでにないほど病が憎い。

 だが、負けると決まったわけじゃない。必死に涙を堪える秋奈に手を伸ばし、子供を慰めるように頭を撫でる。