余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~


 それからお母さんともしっかり話し合って、東京の大学病院から白藍へと転院してもらうことにした。幸い手術のスケジュールもうまく都合をつけられ、最短の一週間後に行う予定だ。

 天乃が入院した翌日、さっそく脳の血管に造影剤を入れる検査を行った。その日の手術をすべて終えた深夜に、俺はひとりデスクに座りその結果を黙って見つめる。

 悪性の可能性が低くなればと希望を持って詳しい検査をしてみたが、やはり所見は同じ。ベテランのドクター数人にも見てもらったが、皆一様にグリオーマではないかという意見だった。

 天乃が言った通り、腫瘍のある位置もとにかく難しい。これはたとえ良性であっても、神経や血管を傷つけずに全摘出するのは相当な腕と精神力が必要だ。とはいえ、できる限り取り去ってやろうという気持ちは変わらないが。

 どうアプローチしようかと考えを巡らせていた時、スマホが鳴り始めた。着信の相手は父だ。「はい」と出ると、のんびりした声が聞こえてくる。

《元気だったかい? 愛しのわが息子よ》
「元気……とは言い難いね、ここ最近は」
《おやまあ》

 なんてまぬけなリアクションだ、と一瞬気が抜ける。この父親は脳外科界隈ではわりと有名な医者で、自分の知識や技術を広めるために今もアメリカと日本を行き来している名医なのだが、普段はこの調子だ。