余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

「天乃……」

 俺の口からはそれしか出てこない。彼女は気まずそうに長いまつ毛を伏せた。

 ひとまずお母さんと挨拶をする。覇気のない笑みを浮かべた彼女は、「内緒にしていてごめんなさいね。天乃と話してやってください」とだけ言い、カーテンの向こうに出ていった。

 ふたりになり天乃に顔を向けると、ようやく目を合わせた彼女が決まりの悪い笑みを見せる。

「……バレちゃったね。こんな形で知られたくなかったんだけどな。隠してたバチが当たったのか」

 軽い調子で言うものの、空元気なのがひしひしと伝わってくる。俺はベッドに近づき、細く白い手を取って力が抜けたように椅子に腰を下ろした。

「一緒にいたのに気づいてやれなくて、本当にごめん。医者失格だ」

 両手で彼女の手を握り、怒りや後悔がごちゃ混ぜになった声を絞り出した。

 責める言葉なんか出てこねぇよ、慎太。責めているのは俺自身なんだから。愛する人の不調にも気づかないで、なんのために医者をやっているんだ。

 頭を垂れていると、華奢な手が俺の手を握り返す。少し顔を上げると、思いのほか力強い瞳で俺を見つめる天乃がいた。