ああ、せっかく話せるチャンスだったのに……! うなだれる私の耳にふたりの声が届く。
「りほさん、お疲れ様」
「お疲れ様です。先生、こんなに暑いのによく外にいられますね」
「んー、梅雨も明けたし清々しいから。夏好きなんだよね」
当たり障りのない会話をしているけれど、彼女もこの病院で働いている人なんだろうか。名前で呼んでいるし。
夏くんともたくさん会っているのかもしれない。羨みと嫉妬がむくむく膨らんでくるのを感じていると、彼女がなにやらかしこまった調子で話し出す。
「あの、先生。この間は父があんな話をしてすみませんでした。困らせちゃいましたよね……突然『娘と結婚してほしい』だなんて」
「けっ──!?」
ショッキングな内容に思わず声をあげてしまい、慌てて口を抑えた。同時に、花壇を彩るすらりと伸びたグラジオラスの陰に咄嗟に隠れようと身を屈める。
じっとしていると、「セミかな?」という夏くんの呑気な声が聞こえてきて、ひとまず胸を撫で下ろした。なんとかバレていないみたい。
待って待って……夏くんに結婚の話が出ていたの? りほさんのお父様が持ちかけたみたいだけれど、彼らと夏くんはどういう関係なのだろう。
「りほさん、お疲れ様」
「お疲れ様です。先生、こんなに暑いのによく外にいられますね」
「んー、梅雨も明けたし清々しいから。夏好きなんだよね」
当たり障りのない会話をしているけれど、彼女もこの病院で働いている人なんだろうか。名前で呼んでいるし。
夏くんともたくさん会っているのかもしれない。羨みと嫉妬がむくむく膨らんでくるのを感じていると、彼女がなにやらかしこまった調子で話し出す。
「あの、先生。この間は父があんな話をしてすみませんでした。困らせちゃいましたよね……突然『娘と結婚してほしい』だなんて」
「けっ──!?」
ショッキングな内容に思わず声をあげてしまい、慌てて口を抑えた。同時に、花壇を彩るすらりと伸びたグラジオラスの陰に咄嗟に隠れようと身を屈める。
じっとしていると、「セミかな?」という夏くんの呑気な声が聞こえてきて、ひとまず胸を撫で下ろした。なんとかバレていないみたい。
待って待って……夏くんに結婚の話が出ていたの? りほさんのお父様が持ちかけたみたいだけれど、彼らと夏くんはどういう関係なのだろう。



