余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

 楓がそんな風に思っていたとは初めて知った。あれも無駄じゃなかったんだなとほくほくする私に、彼は珍しく真面目な調子で語りかける。

「姉ちゃんはわが道を行くタイプだけど、全然ワガママとかじゃなくて、いつも人のことを思って行動してるじゃん。夏生さんとのことも、たぶんあの人のためを思って会わないようにしてるんだろうなって、なんとなくわかるよ」

 そこまで理解してくれている彼を、私は黙って見つめる。

「姉ちゃんのそういうとこ嫌いじゃないし……俺も、姉ちゃんの弟でよかった、と思う」

 目を逸らしたまま、口調がたどたどしくなってくるところに彼の恥ずかしさが表れていて、じんとすると同時に愛しく感じた。

 普段は絶対こんなこと言わないもんね。きっと楓も私と同じように、気持ちを伝えておきたくなったのだろう。

 ちょっぴり瞳が潤むのを悟られたくなくて、腰を上げて彼のほうに歩み寄り、ふわっとした髪をくしゃくしゃと撫でる。

「普段そっけなくしてても、いつまでも可愛いなー。私の弟は」
「うっざ」

 顔をしかめて嫌がられても、やっぱり家族は愛おしい。

 病気になって、私は皆とは違うのだと言いようのない孤独を感じていたけれど、家族だけはどんな時も見放さないでいてくれる。決してひとりじゃないのだと、心強さを取り戻せた気がした。