そうだ、このまま帰ったらなにも変わらない。顔を見られただけで満足していないで、ちょっとでも話をしよう。私には時間がないのだから。
気合いを入れ直し「ありがと、慎ちゃん」と笑みを返して、私たちは別々の方向へ歩き出した。
夏くんを追ってむわっとした暑さの中庭に出ると、円形の花壇の周りがベンチになっており、彼はそこに足を組んで座っていた。ビニール袋からおにぎりを取り出しているので、やはり休憩中らしい。
屋根がついているとはいえ、暑いことに変わりはない。こんな時によく外へ出る気になるな……。夏くんはその名前の通り夏生まれだから、この時期が好きなのは知っているけれど。
でも逆に、人はあまりいないし今なら話せそうだ。胸を弾ませて近づいていく。
「なつ──」
「芹澤先生!」
声をかけようとした瞬間、反対方向からやってきた小柄でものすごく可愛い女性も夏くんを呼んだ。わずかな差で彼女のほうが早く、私は口をつぐんで足を止める。
歳は私と同じくらいか少し下だろうか。ふわふわのセミロングの髪にフェミニンな服装の彼女は、あからさまに嬉しそうな様子で夏くんの隣に腰を下ろす。まるで大好きな主人に飛びつく子犬みたいに。
行き場を失った私は、咄嗟にふたりの後方に座ってしまった。
気合いを入れ直し「ありがと、慎ちゃん」と笑みを返して、私たちは別々の方向へ歩き出した。
夏くんを追ってむわっとした暑さの中庭に出ると、円形の花壇の周りがベンチになっており、彼はそこに足を組んで座っていた。ビニール袋からおにぎりを取り出しているので、やはり休憩中らしい。
屋根がついているとはいえ、暑いことに変わりはない。こんな時によく外へ出る気になるな……。夏くんはその名前の通り夏生まれだから、この時期が好きなのは知っているけれど。
でも逆に、人はあまりいないし今なら話せそうだ。胸を弾ませて近づいていく。
「なつ──」
「芹澤先生!」
声をかけようとした瞬間、反対方向からやってきた小柄でものすごく可愛い女性も夏くんを呼んだ。わずかな差で彼女のほうが早く、私は口をつぐんで足を止める。
歳は私と同じくらいか少し下だろうか。ふわふわのセミロングの髪にフェミニンな服装の彼女は、あからさまに嬉しそうな様子で夏くんの隣に腰を下ろす。まるで大好きな主人に飛びつく子犬みたいに。
行き場を失った私は、咄嗟にふたりの後方に座ってしまった。



