授業中、翔太は気になって華を観察していたが、船を漕ぎながらも何とか頑張って授業を受けていたので、華を少し見直した。

 昼休みになり、中庭でクラスメイトと昼食を取っていた時、スマホに華から着信があり、翔太はギョッとした。

(な、なんでっ)

 何となくクラスメイトに見られない様に、スマホのロック画面を解除して、華からのメッセージの内容を確認したが――

 その内容に、翔太はうなじの毛がこわばった。

 午後の授業になっても、華からのメッセージの内容が頭をぐるぐる回り、その事ばかり考えてしまう。

『翔太ちゃんって、彼女いるの?』


(なんで、そんな事聞くんだよっ)

 華の事だから絶対深く考えてないだろうと頭で分かっていたが、自分の心の動揺が制御出来ないのが、翔太は凄く嫌だった。

 何で動揺しているのか、考えたくなかった。動揺している自分を律する様に、動揺を華に悟られない様に、翔太は授業後すぐ華に返信した。

『いないけど』

 そのメッセージに既読は付いたものの、華からの返信はなかった。

(あいつ、何なの)

 翔太は華が家に来るまで、この事について悶々と考えさせられる事になった。

***

「こんにちはー」と華は制服のまま、携帯ゲーム機と充電器を抱えてやって来た。

「こら、ちゃんと仮眠する約束だろ」
「寝てきたよ、一時間くらい。本当だってっ」

 ムキになる華がちょっと可愛く思えて、翔太は呆れてため息を漏らした。

「夕飯までだからな」

「OK」と玄関先で笑顔で答えると華は、翔太の家に上がり込んだ。

 自分の部屋に華を招き入れる。翔太は夜中に華を自室に入れた時より、少し緊張した。だがその緊張は、すぐに掻き消えた。

 華が一目散に、ベッドに寝転がりそうになったからだ。翔太はカッと頭に血が昇った。

「おい、こらっ。ベッドに寝転ぶな!」

 今日は絶対許さんと、翔太は華の腕を掴んだ。

「えー。何でっ? 昨日は貸してくれたじゃない?」
「何でって……男のベッドに、簡単に寝転ぶなよ」

 言ってしまって、翔太はハッとした。小学生の頃、うやむやに別れた時の事が思い出される。絶対変な空気になると、翔太は慌てて咳払いをした。華は暫く翔太を黙って見ていたが、ごめんねと素直にベッドから降りた。

「よし。やろう、やろうっ。時間が勿体ない!」

 と、華はいつもの強引な華に戻っていた。翔太は正直その華の強引さにホッとし、体の緊張を解いた。

***

 それからは時間を忘れて、二人でギャーギャー騒ぎながら遊び倒した。まるで本当に昔に戻ったかの様だった。いつの間にか外が暗くなっており、気が付けば、夜の六時を回っていた。

つづく