華は真っ暗な自室のベッドの上に、倒れ込む様に寝転がっていた。もう何時間、そうしているだろう。体が怠くて動かない。

(……なんか、ここ最近、私ずっとこんな感じな気がする)

 なんであんな馬鹿な事してしまったんだろうと、華は涙が出てきそうになった。

 あの時の、翔太の唇の柔らかさと、翔太の顔が忘れられない。翔太にキスされて、気持ち悪さや逆に虚無さが自分に湧いてこない事が、華に更に追い討ちをかけた。

(うわあああああっ、もう、ヤダ! もう考えたくないっ)

 光の提案は、まさに悪魔の提案だった。してしまったからには、なんの代償も無しにとはいかないのだ。もう、知らなかった頃の自分には戻れない。

 翔太としてしまった事は、決して消えない事実として、一生華は忘れる事は出来ないだろうと感じた。翔太にも、もう合わせる顔がない。せめて翔太にとっては何でもなかった事を、祈るしかないと思った。

 とにかくこのままでは、また考えすぎて、熱を出し寝込む事になりそうだと思った華は、気力を振り絞って、起き上がった。

 定期テストも近い。何かに集中する時、周りの事が見えなくなるのは、自分の短所であり、長所だ。

 頭は良い方ではないが、土壇場の集中力で、勉強事に関してはいつも乗り切ってきた。ある一定の成績を取っておかないと、ゲームプレイに支障が出る。そこら辺は親との約束だ。

 それに今は、少しでも頭の中から翔太の事を追い出さなければ、精神的におかしくなりそうだと華は頭を抱えた。華は何とか机にたどり着き、深呼吸をすると、教科書とノートを開いた。


つづく