エルピスの花嫁~双子の神様に愛されて~

     *

 そうこうしているうちにお昼休み。
 チャイムの音が鳴りやむよりも先に、机の上にランチバッグが置かれた。

「これ、珠子ちゃんの分ね!」

 私が顔を上げると、幸夜くんがニッコリ笑っていた。

「昨日、売店行ってたでしょ?」

「お弁当まで作ってくれてたの!?」

「料理男子ってモテるらしいじゃん。アピールアピール」

 朝食のみならず……
 私が目を丸くしていると、幸夜くんと咲仁くんが自分たちの机と私の机を動かして島にしてしまう。
 また勝手にこんなことと思ってしまうけど、手に取ったランチバックの重みが文句を言うのをはばからせる。
 

 正直、ちょっと嬉しい。
 朝から自分のためだけに料理をする気になんてならないから朝はいつもトーストで、お昼はいつも売店のパンだった。

 幸夜くんと咲仁くんの前にもお弁当が並んで、私はお弁当の蓋を開ける。
 思わず感嘆の声がもれた。

「わあっ、凄い!」

 キャラ弁だった。
 おにぎりはクマの形。斜め半分に切られた卵焼きはハートの形になるように組み合わされていて、その上にケチャップでしっかりハートが描かれていた。ミートボール、ブロッコリー、ミニトマトにはハートのピックが刺さっている。
 これをあの朝食を作る傍らで用意してくれていたのかと思うと、驚きしかない。

「俺の分まで……」

 咲仁くんが眉間にシワを寄せながら、自分のお弁当を睨みつけている。
 朝食と違って、お弁当の方は私の物とまったく同じかわいいクマちゃん弁当だった。

「練習! 一番上手に出来たのが珠子ちゃんの分だよ」

 お星さまが散るようなきらびやかなウインクが飛んできた。
 なんの意味もないとわかっていても、思わず体を横にズラしてそのウインクを避けるような仕草をしてしまった。

「アハハ、ありがとう」

 乾いた笑いで誤魔化していると、これみよがしなため息をつきながら咲仁くんがマスクを外した。
 あらわになる、咲仁くんの顔。
 こうして幸夜くんと並ぶと、本当にそっくりなことと、全然違うってことがわかる。

 思わず、頬に手を当てる。
 熱を持っている気がした。

「どうしたの? 虫歯?」

 心配そうに身を乗り出してくる幸夜くんと、無関心そうに口元を押さえながらセキをしている咲仁くん。

「ううん、なんでもない。大丈夫」

 私は笑ってお箸を手に取る。

「いただきます」

「「いただきます」」

 私に続いて幸夜くんと咲仁くんも箸を手にする。
 その声はハモっていて、思わず笑みが零れる。

 ノーマスクの咲仁くんよ! とひそひそ声が聞こえてきて、相変わらず注目を浴びてしまっていた。
 お陰でなんだか緊張してしまって、食べにくかった。