エルピスの花嫁~双子の神様に愛されて~

     *

「すみません。私まで送ってもらっちゃって」

 榴先輩が花を家の近くまで送っていくのはいつものことだけど、今日は私まで送ってもらってしまった。
 マンションの前に引っ越しのトラックが止まっていたから、その手前あたりで立ち止まってお礼を言う。

「いい、気にするな」

「お家入って、鍵かけるまでは油断しちゃダメよ。女の子の一人暮らしは危険がいっぱいなんだから!」

 二人はそう言ってくれるけど、あのカフェから私のマンション経由で花の家に向かうと、結構な遠回りになってしまう。
 その分、二人は長く一緒にいられるし、遠慮はいらないのかな?
 純粋に心配してくれてるみたいだし、私は素直に「ありがとう」そう言って二人と別れた。

 マンションのエントランスでポストを確認して、エレベーターで部屋まで上がる。
 ポストの中身はダイレクトメールだらけで、パパに連絡しなきゃいけないような手紙とかはなかった。
 エレベーターを降りて廊下を進んでいると、扉が開いているのが見えた。
 あれ? あそこ、私の家じゃない?
 サプライズでパパまで帰ってきたのかと思って駆け寄ると、見知らぬ二人組が玄関から出てきた。

「ありがとうございましたー!」

 被っていたキャップを外して、部屋の中に向かって頭を下げて挨拶をしている。
 二人組が着た揃いの作業着には、マンションの前に止まっていた引っ越し業者の名前がプリントされていた。
 扉を閉めて立ち去る引っ越し業者の二人とすれ違い、私は嫌な予感しかしなかった。
 閉まったばかりの玄関に慌てて近寄り、扉を開ける。

「あ、珠子ちゃん。お帰り~」

「遅かったな」

 嫌な予感は的中した。
 玄関を開けて私を出迎えたのは、あの双子だった。

「寂しかったよー!」

 幸夜くんは真っ直ぐ私に向かってくるけど、咲仁くんは通りすがっただけだった様子で廊下の奥に消えてしまった。
 両手を広げた幸夜くんに抱き着かれたけど、上手く反応出来なかった。
 だって、部屋の中にはさっきの引っ越し業者のロゴが入った段ボールでいっぱいだったから。

「お風呂にする? ごはんにする? そ・れ・と・も、僕?」

 でも、さすがに至近距離で鼻と鼻をくっつけられてはたまらない。

「なんで、二人がここにいるのよー!」

 抱きしめられた腕からは抜け出せなかったから、せめて幸夜くんに背中を向けて叫ぶのだった。