「あの夜、傷だらけで倒れてるこころを見てたら……その元凶の愛沢が無性に憎くなった。彼と決別するために、もう必要ないと思って消したんだ」
「そうだったんだ」
「警察を頼るなら、証拠として残しておいた方がよかったのかもしれないけど……どうしても我慢できなかった。あれ以上、こころを苦しめるなんて」
ぎゅう、と胸を締めつけられる。
そんなまっすぐな星野くんの想いを、一度でも信じられなくなったことが心苦しい。
それでも、目を覚ましてから隼人の連絡先がメッセージアプリに登録されていたということは、病室で付き添ってくれていた隼人自身が勝手に追加し直したのだろう。
2度目の転落もきっと、彼の身勝手によるものだった。
以前の臆病で従順なわたしとはどこか変わったいまのわたしが気に食わなかったのかもしれない。
再び記憶を失うか、いっそ記憶が回復して以前のように戻ってくれたら────そんなふうに期待して突き落としたのかも。
こじれた現状をリセットするために。
あるいは単に、星野くんを犯人に仕立て上げたかっただけかもしれないけれど。
いずれにしても、星野くんが自身の仕業だったことにしたから、結果的に隼人を庇う形になった。
お陰でもう隼人の出る幕もない。
星野くんのことだから、愛憎を募らせた隼人にわたしが逆恨みされないように、とっさに自分ですべて背負うことにしたんだと思う。
“王子”はおろか、道化師どころか悪役になることも厭わずに。
わたしはずっと、彼の嘘に守られていた。
どこまでも、本当にどこまでも優しい嘘に。
「星野くん」
深い想いを実感して、噛み締めながら呼ぶと彼はそっと顔を上げた。
「ありがとう。本当にもう、なんて言っていいのか……。わたしのためにここまでしてくれるなんて」
「……僕はただ、自分の気持ちに従っただけだよ。悪者になってでもきみを救いたかった。解放してあげたかった」
やわく微笑んだ彼にたまらず抱きつくと、回した腕に力を込める。



