嘘に恋するシンデレラ


「けど、これではっきりしただろ? 誰を信じるべきか」

「……うん、そうだね」

 常軌(じょうき)(いっ)した言動や彼の部屋で目にしたもの、仕込まれていたGPSを目の当たりにした以上、確かに星野くんのそばにいるのは危険と言える。

 愛沢くんはすべて正直に話してくれたし、暴力を含めた自身の非を認めて反省していた。
 もうしない、と約束もしてくれた。

 記憶をなくしてからは確かに一度も暴力なんてなかった。
 だからこそ、彼の言葉には誠実さを感じる。

(信じてみてもいいのかも)

 自ずとそう思えて、鞄を下ろした。
 くまのキーホルダーはもうついていない。

「ごめんね。わたし、願望に左右されて大事なものが見えてなかったみたい。隼人のことも誤解してた」

「いいよ、お互いさまだって。つか、おまえは悪くないだろ」

 肩をすくめた愛沢くんに小さく笑い返すと、彼はふと真剣な表情をたたえた。

「なあ、こころ。これからはもっとおまえのこと大切にするって約束する。だから、変わらず俺のそばにいてくれ」

 揺れた心が傾いて、引き込まれていく。
 差し伸べられた手を取ることに、もう躊躇なんてなくなっていた。

「……うん。わたしももう迷わない」



 愛沢くんの家からの帰り道、ふいにスマホが震えた。
 メッセージの通知だ。

 彼からかと思ったけれど、表示されているのはなんと星野くんの名前だった。

「どうして……」

 訝しむように呟く。

『俺以外の男と連絡取んな』

 確かに以前、彼のアカウントは愛沢くんによって消されたはずだったのに。

 アプリを開いて眉を寄せた。
 登録されているアカウントの一覧から、愛沢くんの名前が消えている。

(どういうこと……?)

 まさか星野くんの仕業だろうか。
 昨日、わたしが気を失った隙に?

 どことなく硬く強張った心持ちでメッセージを開いた。

【気づいたんだね】

 どきりと心臓が跳ねる。
 何に、だろう。

 星野くんの嘘に?
 それとも、写真やハンカチに? あるいはGPSのことだろうか。
 いずれにしても、彼の秘密にちがいはない。

 一拍置いて、言葉が続いた。

【話したいことがある。僕から逃げないで】