思い返してみても、彼の行動は基本的に自分本位なものばかり。
いつだって自分の“好き”を押し通して、それが叶わないと無理やりにでも従わせようとして。
わたしを怖がらせてでも、追い詰めてでも、自身の意思を優先する。
とても相手を思いやっているとは言えない。
彼にとってわたしは“大切”じゃないのかもしれない。
「ねぇ、隼人は……」
気づけば口をついていた。
考えれば考えるほど不自然な気がしてくる。
お互いにお互いの隣が居場所として相応しいのか、自信が持てなくなってくる。
「わたしのどこが好きなの?」
彼が隣にいるのは、わたしを束縛する理由は、本当に好意なのだろうか。
愛沢くんはうっとうしそうにため息をついた。
眉をひそめ、露骨に不機嫌そうな表情を浮かべる。
「なに? 信用してないわけ?」
「そうじゃないけど……」
気を挫かれてついうつむくと、沈黙が落ちた。
周囲は騒がしいのに、すべての音が耳をすり抜けていく。
「……悪い。おまえを責めたいわけじゃなくて」
ややあって、愛沢くんが静かに言った。
掠れた声で紡ぐと、机の上にあったわたしの手を握る。
「俺はちゃんとおまえが好きだよ」
「え……」
「素直でかわいいし、優しいじゃん。俺がひどい態度とっても嫌わないで、そばにいてくれてさ。そういうとこ」
彼はさっさと言いきると、立ち上がって「じゃ」と背中を向けてしまう。
一瞬目にした頬は色づいて見えた。
(照れ隠し……?)
彼はただ、不安でわたしに甘えていた。
それが少し度を越してしまっただけだったのかもしれない。
初めて愛沢くんの心の機微を目の当たりにした気がする。
放課後、予定があるという愛沢くんと別れてひとり帰路についた。
歩道橋の上に立って階段を見下ろしてみる。
擦れたコンクリートや錆びた鉄骨を目の当たりにして足がすくんだ。
(こんなところから突き落とされたんだ)
手すりに手を載せ、目を閉じた。
思い浮かべてみる────夜、ここに立っているわたしの後ろから伸びてくる手。
(背後にいるのは……)
ふっと目を開ける。
身体中がずきずきと痛み始めた。
刻まれた傷や痣が、蔦のように絡みついて締め上げてくるみたい。
「やっぱり、愛沢くん……?」
後ろに彼がいる想像が鮮明にできてしまう。
だけど、それはあくまで想像であって記憶じゃない。
(だめだ、思い出せない……)
彼に対する直感的な苦手意識や星野くん寄りの願望にも邪魔されている気がする。
「こころ?」



