嘘に恋するシンデレラ

     ◇



 昼休みを迎え、否応なしに愛沢くんに捕まった。
 だけど、いま頭の中にあるのは星野くんのことばかりだ。

『……でも、やっぱりやめておけばよかったね。あんなこと』

 その言葉の真意を知らなきゃいけないような気がする。
 たまらず逃げてしまったけれど、彼とはもう一度話さなきゃならない。

 星野くんはやっぱり、何かを知っている。
 もっと言えば、関わっているのかもしれない。

(やっぱり……額の怪我のことかな)

 ほとんど直感だったけれど、それについても問いただすとしたら星野くんの方だ。
 何かを握っているのは間違いないし、愛沢くんよりはまだ聞き出す余地がある。

 問題はどうやってコンタクトを取るか────。

 冷静に問答(もんどう)を交わさなきゃいけない。
 時と場所、状況を慎重に見計らわないと。

 星野くんがあんなふうに豹変(ひょうへん)してしまったら危ういし、まず話にもならないから。

(何より……)

 愛沢くんの目を()い潜らないことには叶わない。

 昼食をとってやり過ごしていると、昼休みは残り10分ほどになっていた。
 落ち着かない鼓動を自覚しながら、意を決して席を立つ。

「あの……ちょっとお手洗い行ってくる」

「ん」

 愛沢くんは片手にパックのジュース、片手にスマホといった具合で上の空だった。
 タイミングは完璧だったと思う。

 怪しまれないうちに離れようと踏み出したとき、ふと彼がわたしを呼ぶ。

「こころ」

 ぎくりとした。
 思わず身を硬くしてしまいながら振り向く。

(気づかれた……?)

 そうひやひやしていたものの、愛沢くんはこちらを見向きもしないまま無言でてのひらを差し出しただけだった。

 ほとんど条件反射的にスマホを取り出して渡すと、また何も言わずに受け取る。

 心の内で暗雲が濃くなるけれど、いまは好都合だった。
 そのまま教室をあとにして駆け出す。

(急がなきゃ)

 猶予(ゆうよ)は少ない。
 チャイムが鳴るまでに戻らないと。



 喧騒(けんそう)の中、星野くんの姿を捜した。
 C組の教室やバルコニーを覗いてみたけれど、どこにも見当たらない。

 廊下から何気なく窓の外を見やったとき、屋上に人影があった。

「あ……」

 ────階段を駆け上がって扉を開けると、澄んだ青空から柔らかい日差しが降り注ぐ。

 彼の後ろ姿が目に入った。
 屋上のふちにひとり佇んでいる。

「星野くん」