となりの色気がうっとうしい



「ね?これでも、全然手加減してる方だから、これ。正しいことは大事かもしれないけど、時にはそれよりも、危険を避ける方を優先したほうがいいと思うよ」


なにそれ。


それじゃあ、今の私は、まるで、天海くんに危険から守ってもらったみたいじゃないか。


彼の言っていることが的を得ているから、それがものすごく悔しくて、視線を落とす。


「西木さん、勉強はできるのに、そこは猪突猛進というか、後先考えないんだね。まぁ、これが、一位と二位の差かなぁ」


最悪。


こんな人に、守られたなんて絶対嫌。
やっぱり嫌いだ。


いや、今の発言で、大嫌いになった。


私が、天海双葉が嫌いな理由。


それは、不良で、それなのに妙に大人びた雰囲気を纏っていてふしだらで、目立つ存在だから、だけじゃない。


それでいて、私より勉強ができるから。


私は、頑張って頑張って頑張って、誰よりもいろんなことを我慢して、ようやく手に入れた順位なのに。


一年の頃から、毎度、授業はサボってばかりで学校も休みがちな彼が、サラッと一位をかっさらっていく。


わかっている。これはただの嫉妬だ。


「もう少し、肩の力抜いた方が、勉強も楽しくなるんじゃない?」


グサッ
グサッ

とまるで、心臓をえぐるように刺さる、天海くんの言葉たち。


何度でも言う。
今日は、最悪の日だ。


「……嫌い」


「え?」


雨にかき消される私の声に、天海くんが聞き返すので、一気に空気を吸った。


「ほんっと、大っ嫌いっ!!」


私はそう叫んで、雨の中を全速力で走った。