この人……本気で私の傘に一緒に入るつもりなの?
さすがに、冗談だと思ったのに。
彼の黒髪の毛先から、ポツポツと雫が落ちる。
その姿が、同い年とは思えない色気を醸し出していて、思わず目をそらす。
「無理です」
「えーー、西木さん、マジで俺のこと嫌いだね〜」
「え?」
直接、嫌いなんて伝えた覚えはないのだけれど。
どうしてバレているのだろうか。
確かに家は隣同士だけれど、話したのは今日が初めてなのに。
「いっつも汚物見るみたいな目で見てるでしょ?俺のこと。バレてるよ」
天海くんは「歩くよ?」と言いながら、ゆっくり歩き始めた。
最悪の日だ。
雨じゃなければ、走って今すぐ逃げるのに。
ずぶ濡れになるのは流石に嫌だから。
そもそも私の傘だし。
というか、もう天海くんはずぶ濡れなんだから、諦めて濡れたまま帰ればいいのに。
「今日、西木さんの日だね〜」
「はい?」
「雨。名前に入ってるでしょ?」
そう言われて、思い出す。
『月雨ちゃん』
「……さっきの、わざとですよね?」
「なにが?」
と、楽しそうに聞き返すその声にまた苛立つ。
「私のこと、下の名前で呼んだの。全然そんな風に呼ぶ間柄じゃないのに。あの人たち……」
そこまで言って、言葉を飲み込むと。
「今頃、やらしい想像してるかもね〜」
そんな下品なセリフが耳に入ってきて、鳥肌がたつ。
だから嫌いなんだ……この男。



