となりの色気がうっとうしい



「俺たち、帰る場所同じだからさ」


っ!?


突然、なに言い出してるの!?


「ちょっと、天海くん、語弊がある言い方しないでくださいっ」


「語弊?どの返が?本当のことでしょ。部屋だってすぐ隣だし。時々聞こえるよ〜月雨ちゃんのかわいい声」


「……なっ!」


『月雨ちゃん』……ってなによ。


「え……ふたりって……」


天海くんの馬鹿げた発言に、なぜか男子生徒2人は顔を赤らめてるし。


もう、なんでこんなことになるのよ。
意味がわかんない……。


「勘違いしないでください!!マンションが一緒ってだけですから!声なんて聞こえるわけないでしょ!アホらしいっ」


一刻も早く、天海双葉から離れたくて、そう吐き捨ててすぐに昇降口を出た。


ありえない。
ありえない。
ありえない。


ぜっったいに関わらない、関わりたくない、関わるわけないって思っていたのに。


すぐにカバンから折り畳み傘を取り出して、早歩きで校門まで急ぐ。


ザーーっと勢いよく降る雨が、私の荒ぶった心も一緒に洗い流してくれてる感覚に、ちょっとずつ気持ちが落ち着いて。


「はぁ……」


とため息をついた瞬間だった。


「西木さん足速すぎ」


嘘でしょ。


隣から、低くて、でも土砂降りの中でも通るような声がして、驚きで顔を上げた。


そこには、雨に打たれる天海双葉の姿。


何してんのよ……。


「ひどいって。目の前にこんなずぶ濡れな人がいて、そんなぼーっと見てられる?」


そう言って、彼が私の手からするりと傘を奪った。


やってしまった。
衝撃で、つい手の力が抜けていた。


さっきよりも高い位置に傘が差される。