となりの色気がうっとうしい





「うわ〜やっぱり降ってきたべ」


「傘持ってねぇよ」


「借りればいいじゃん」


放課後、昇降口へと着いたとき、そんな話し声が聞こえて思わず足を止めた。


借りる……?


チラッと声の方を確認すれば、靴箱横に設置された傘立てを見て何やら選んでいる。


「借りるって、お前、絶対返さねぇだろ」


「それな」


平気で他人の傘を手に取る彼らの、ブハハハと下品な笑い方が昇降口に響く。


サイテーだ。


こういう生き物たちが本当に嫌い。


よく、盗まれないために、とか、防犯のために、とかいうけれど。


そもそも、盗ったり傷つけたりする人間が悪いのに。
気をつけていなかった側が悪かったみたいにいう人たちの神経が信じられない。


ほんと嫌い。


「あの」


私は、彼らの方へ歩きながら話しかける。


「え、誰」


「知らねぇ」


と目の前の2人は顔を見合わせる。


「それ、あなたたちの傘じゃ、ないですよね?」


「……は?何、あんたの?」


「いえ。私は折り畳み傘を持っているので」


「あ?じゃあカンケーねぇだろ」


ありえない。人として。
関係あるとかないとかの話ではない。


目の前で犯罪の瞬間を目撃してしまったんだ。
黙っていられるわけがない。