となりの色気がうっとうしい



玄関を開けて、斜め下から嫌いな声が聞こえた気がした。


恐る恐る、視線を下に向ければ。


うちの玄関のすぐ横に腰を降ろして壁に背中を預けた天海くんがいた。


その手には、私の折り畳み傘。


最悪。
朝っぱらからどうしてこの人の顔を見なきゃならないんだ。


あぁ、頭が痛い。


しかも、今、なんて言った?


一緒に?学校?


本当は今すぐにでもドアを閉めたい。
けれど、私は今から学校に行かなくちゃいけない。


「嫌です」


「あ、これ、傘、とっても助かった。月雨ちゃんは大丈夫だった?すげぇ濡れて帰ったけど」


「大丈夫です」


彼から傘を受け取ってカバンにしまい、それだけ答えてドアの鍵を閉める。


その間も、彼は私のそばから離れない。
一体何考えているの?


私、嫌って言ったよね?


ていうか、また、『月雨ちゃん』って。
馴れ馴れしい。


「あの、天海くん、私、1人で行きたいので」


「とりあえず教室まで。月雨ちゃんのこと心配なんよ」


「……っ」


立ち上がったかと思ったら、急に距離を詰めてきて言う天海くん。無駄に色気付いたその顔面に、思わず目を逸らしてしまった。


綺麗、だなんて思いたくない。