すると神崎くんが優しく微笑んだ。 「もう気づいてるんじゃないかな、自分の気持ちに」 ──答えが見えた気がした。 わたし、ばかでのろまだから、こんな大切なことにも気づかなかった。 ずっと不明瞭で正体不明だった感情に名前がついて、ようやくそれを飲み込むことができた。 その瞬間、見慣れた世界が一気に色づいて見えた。 「ありがとう、神崎くん」 お礼を告げれば、わたしの推しは「いいえ」と言って、わたしよりも嬉しそうに笑った。