「あ、あの……?」

「オレは(ひそか)。藍の、わかりやすく言うとマブダチってとこかな」

「まぶだち……?」


そこで彼がサングラスを外し、わたしは「あ!」と声をあげる。

密さんのことを、わたしは知っていた。

藍くんのクラスメイトで、よく一緒にいるところを見かけたことがある。

見た目は派手だけど顔立ちは整っていて、よく女子たちの熱い視線の的になっている。


「そ。キミ、由瑠ちゃんだよね」

「どうして名前を……」

「藍から聞いて知ってるよ。甘いの超苦手なあいつにスイーツ食わせた勇者ちゃん!」


藍くんが、わたしのいないところでわたしのことを話してくれている。

そのことに喜々としたのは一瞬。

続けて知らされた思いがけない事実に、意識はすっかりそちらに奪われていた。


「えっ、藍くん、甘いもの苦手なんですか?」

「うん、一口も受け入れないよ。あれ、あいつ言ってなかった?」

「はい、一言もそんなことは……」

「ふーん」


なぜか含みを持たせるようにニヤニヤする密さん。