「雨、凄いね。」
「そうだね。」
そう言って、私達は、空を見上げる。
「なぁ、野原。」
「なに?」
「お前さ、好きな奴とかいるの。」
「⋯…いるよ。」
今、隣に。その言葉を飲み込んでドキッ。ドキッと速くなる鼓動を抑えつつ、いつものように自然に答える。
「そっか……」
君の声に、元気がないように感じるのは、この雨のせいなんだろうか。
「矢島くんはいるの?」
私は今まで気になっていたけど、聞けなかったことを聞いた。
「いるよ。」
「そっか、矢島くんの好きな人ってどんな人?」
「驚かないんだな。」
「……まぁね。」
本当は、驚いてる。
それに、好きな人がいるなんて、知りたくなかった。でも、私、馬鹿だから。諦めが悪いから。もしかしたら、その人に勝てるかもしれない。そんな打算的な考えを隠してまた聞くの。
「それで、どんな人なの?」
「明るくて、いつも馬鹿みたいに、誰かに気を遣ってて、こんな俺にも、怖がらずに話しかけてくれる、そんな人だよ。」