婚約者の浮気相手は母でした。

「私と同室は、もう嫌だということ?」
「そういう訳ではないよ。ただ恥ずかしいというだけさ。その……いつまでも、姉さんに甘える弟ではいたくないからね」

 イルルドは、ある一定の年になるまで、私にべったりだった。
 今でこそ、年齢以上に大人びているが、昔はむしろ少し幼いくらいだったような気がする。
 そんなイルルドを、私はついつい甘やかしていた。弟が可愛くて仕方なかったのだ。いや、今でも可愛く思ってはいるのだが。

「イルルドは、随分と立派な大人になったわね。ローライト侯爵家の次期当主として、本当に相応しい人物になったと思うわ」
「そうかな? 自分では、まだまだ未熟だと思っているけれど……」
「そうやって謙虚な所も、あなたの魅力だと思っているわ。ローライト侯爵家は安泰ね」

 イルルドが頼もしくなったことに、私は寂しさを覚えていた。