婚約者の浮気相手は母でした。

「行きたいと思っています。やはりあの二人には、然るべき罰を受けるべきだと思っています。少なくとも、このまま逃げて全て水に流すなんて許せません」
「……そうか」

 私の結論に、お父様はゆっくりと頷いてくれた。
 正直な所、お母様への怒りは以前よりも大きくなっている。私の出自に関しても、彼女は裏切りを働いていた。それを許すことはできそうにない。
 ただ出自を知る前とは違い、私はかなり冷静になっている。今の私はきっと、怒りに任せて拳を振るったりはできないだろう。

「イルルド」
「父様、わかっています。姉さんを守るのが、このローライト侯爵家の長男の役目です」
「うむ」

 イルルドに声をかけたお父様は、その自信に溢れた返答に満足そうな顔をしていた。
 私の出自が判明したことで、私達はほんの少し変わった。ただ変わらないのは、私達が家族であるということだ。
 今なら、それがよくわかる。私のお父様と弟は、この先何があってもお父様と弟なのだ。