婚約者の浮気相手は母でした。

「今回の捜索が終わったら、私はこの家を出て行きます……それでどうか、お許し――」
「――アルメア、馬鹿なことを言うんじゃない!」
「……え?」

 そこで私は、大きな音ともに聞こえてきた怒号に顔を上げた。
 すると、えぐれた後のある机と泣きそうな顔をしているお父様が目に入った。よく見ると、お父様の右手からは血が流れている。
 私が呆気に取られていると、お父様がこちらに近づいてきた。そのまま私は、ゆっくりと抱き寄せられる。

「お前は私の娘だ。それ以上でも、それ以下でもない。私達の絆は、血の繋がりなどというちっぽけな要素で壊れるようなものではないはずだ」
「し、しかし……」
「姉さん、父様の言う通りだよ。本当の親子であるかどうかは、血の繋がりだけで決めるものではないはずだ。姉さんは僕のことを弟だと思ってくれていたじゃないか。それとももう僕のことは弟なんかじゃないと思っているのかい?」
「そ、そんなことはないわ!」

 お父様に続いて、イルルドも私を抱きしめてきた。
 父親と弟の温もり、それが私の荒んだ心に沁み込んでくる。それによって私は理解した。本当に大切なものがなんなのかということを。