婚約者の浮気相手は母でした。

 私は、こういう時のために持ってきていた工具箱の中から金槌を取り出した。
 普通に取り出す方法を見つけてもいいのだが、それは面倒だ。ここは強引な手段を取らせてもらおう。

「えいっ!」
「え? 姉さん、何してるの?」
「イルルド、見つかったわ。これはきっと、手がかりになるのではないかしら?」
「それは……日記?」

 タンスの底は、二重になっていた。恐らく、後からお母様が付け足したのだろう。
 そこに入っていたのは、一冊のノートである。恐らくイルルドが言っている通り、日記か何かなのだろう。

「お母様はマメな人だったけど、まさかこんなものまで残してくれているとはね……」
「まあ、隠していたということは何かしら書いてあるんだろうけど、浮気のことなんてわざわざ書き留めておくかな?」
「それは中身を見てみればわかることよ。えっと……え?」
「姉さん?」

 私は、意気揚々とノートを開いた。
 しかし、そこに書かれている内容に固まってしまった。
 そこに書かれていることは、リビルト様とのことではない。だがその記述は、私にとってとても重大な事柄だったのである。