「でもいいよなあ、夢があって」
 と、俺はいった。
 「うん。漫画家になりたいんだあ」
 と、菜奈。
 「俺なんて夢も希望もない」
 俺はうなだれた。
 「あの人夢も希望もない」
 「大きい夢とかないのか」
 「夢も希望もない奴はだめだ」
 「目がきらきらしてない」
 主婦が口々にやじっている。
 「俺なんてだめさ。夢も希望もない」
 「えええええええええ」
 と、菜奈。
 俺は意外だった。
 「だってえ、おじさん、イエティーとか追いかけてるんでしょ」
 と、菜奈。
 「あ、ああ」
 「夢とかないとそんなことできないよね」
 と、菜奈。そっちかよ。俺は微笑んだ。
 「そ、そうだな」
 俺は片手を後頭部にやった。
 「おじさん夢いっぱいだよお」
 と、菜奈。
 「そ、そうかなあ」
 「普通の人とか一般の人とかはさあ、イエティーとかばかばかしくて、追いかけられないよ」
 と、菜奈は真剣にいった。
 あ、いやおい。ほめてんのか。たくっ、JKってやつは?
 「そんなのばかばかしくて書いてられないよ」
 と、菜奈はやはり真剣。
 あ、いやだからほめてねえよ。
 「はは。まあな。かっこだけのやつだから、そんな価値のないこと書けるのさ。かっこだけ顔だけ。顔だけで書いているようなもんさ」
 「ああ、おじさん、かっこいいよねえ」
 菜奈は笑った。
 俺は赤くなった。
 「か、かっこいい?」
 「うん。みんなが馬鹿にするイエティーなんか取材して、かっこいいよお。まともな人はそんなのばかばかしくて、取材しないよ」
 あ、いやおい、どういう意味なんだよ。これだからJKってやつは。たくっ。
 「ま、まあそうさ。まともじゃない」
 と俺はいった。
 「うん、そうだね」
 といって菜奈は微笑んだ。あ、いやおい、そこ否定しねえのかよ。
 「ははは。顔だけの男さ。まともじゃない」
 「はははそうだね」
 と菜奈も笑った。あ、やっぱそこ否定しねえのかよ。
 「一般の人じゃないよね」
 と、菜奈は明るくいった。
 「ま、まあな。イエティーとか追いかけているし、顔だけだし、一般の人じゃねえよな」
 「そうだよねえ。そんなすごいこと書いている人は一般の人じゃない。カリスマミュージシャンとか役者とかモデル級じゃないかなあ」
 「えええええええええええ」
 俺はびっくりした。さすが、今時のJKだぜ。ぶっとんでやがる。
 「おいおい、いくら何でもカリスマミュージシャンとか役者とかモデルはねえだろう」
 と、俺。
 「ええええええええ。おじさん顔もいいし、見た目いいし、かっこいいし、カリスマミュージシャンとか、役者とかモデル級だよお」
 「えええええええ。そりゃあ、言い過ぎだろう。俺なんて顔だけ。見た目じゃねえよ。中身さ」
 と、俺。
 「じゃあ、やっぱ、カリスマミュージシャンとか、役者とかモデル級だ」
 と、菜奈は笑っていった。
 「な、なんで」
 俺は怪訝だ。
 「だってえ、中身がそなわってないカリスマミュージシャンとか、役者とかモデルとかいっぱいいるもん」
 と、菜奈は明るくいった。
 あ、いややっぱほめてねえええええええええ。
 「やっぱおじさん、すごい人だね」
 と、菜奈。
 「え」
 「おじさん、見た目がよくて、顔がよくて、一般の人じゃなくて、すごいの書いてて」
 俺は片手を後頭部にやった。
 「そ、そうかなあ」
 「中身がそなわってなくて、書いてて」
 あ、いや、どうゆう意味だよ。