「え?あ、そ、そうなんだ」


「実里ー。先生が呼んでるよー」



クラスメイトに呼ばれた実里がホッとした顔をして、「ちょっと行ってくるね」と残して走っていった。



「…んだよ、あからさまに動揺しやがって」



四人で出掛けた日から、実里と二人で遊びに行ったり家に行ったりもしているけど、特に恋人らしいことは何一つしていない。


幼なじみだったあの頃と何も変わっていなかった。



「あれ、おかしいな…」



自販機に飲み物を買いに行くと、すでに先客がいて財布の中身をひっくり返していた。



「…あれ、君、実里ちゃんの…」



怪訝な顔で近づくと、江戸川先輩が驚いた顔で俺を見上げてきた。



「あ、ねえお願いがあるんだけど…」





…なぜ俺が世界で一番嫌いなこの男と、二人で並んで座っているんだろう。



「いやー助かったよ。今金欠すぎてあと二十円が足りなくてさ。でもどうしてもこの新作飲みたかったから」


「二十円足りないってどんだけ金欠…」



二十円を貸してほしいと頼まれ、渋々貸しを作ったはいいものの、行こうとするとなぜか引き止められて今に至る。