君だけは、他の女の子と違っていた。





「ああ、うん。わかったわかった。すぐ家行くからさ、もう少しだけ待っててよ。うん、駅前のケーキね。了解」



スマホを耳に当てながら、反対の手はポケットに突っ込んで廊下を歩く。


外からは放課後の部活動に励んでいる野球部の掛け声が聞こえてくる。



「うん、俺も好きだよ」



最後に挨拶のようにそう言って、通話を切る。


もう“好き”なんて言葉は俺にとって挨拶みたいなものだ。



物心がついた頃から容姿の整っていた俺は、女の子からそれはそれはモテて何回も告白をされてきた。


モテて悪い気はしないし、女の子はみんな可愛くて好きだったから来るもの拒ずで何人もの女の子と付き合ってきた。


高校生になってからもそれは変わらず、一つ変わったことがあるとしたら何人もの女の子と遊びたいから特定の彼女は作らなくなったことくらい。



そうだ、俺は典型的なクズ男なのだ。


周りからなんと言われようと、女の子が好きなんだからそれは仕方ない。



忘れ物を取りに戻ってきた教室には、まだ人がいた。


窓側の席に座って外を眺めている女の子、星野小春(ほしのこはる)


星野さんとは隣の席になった時に少しだけ話したことがある程度で、特別仲がいいわけではない。