パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-



群青色の中の緑が、優しい色でこちらを見る。

彼の慰めの言葉が、体温が
私の涙をいつの間にか止めてしまっていた。


苦しかった胸の痛みが、すこしずつ和らいでゆく。


彼の微笑みは、逆立った私の心をゆっくりと包み込む。


その正解かもわからない返答に、私は困りながらも彼の言った“誰かのために”という言葉を心に留めた。



誰かのために?

…彼のためなら。


と、心の中の私がつぶやいた。

何度か瞬きを繰り返し、彼の言った言葉を理解しようとするうち。



「……私っていつも顰めっ面なの?」



彼からの私の第一印象、それ?
と、間抜けな声が出る。
流れていた涙はポロリとこぼれ落ち、そしてもうすでに引っ込んでしまっていた。



「初めて会った時もそうだった」



え、と見上げると彼がクスクス笑い始める。

何か言い返そうとしたのに、そのあまりに綺麗で無邪気な笑顔に、私は口を噤んだ。



綺麗な顔…。


ほんと、見惚れてしまうほど、完璧だ。



「…そんなに見つめられると、顔に穴が空く」



「あ…ごめん…」



無意識に彼をじっと見てしまう事に、彼はきっと気づいているだろう。


それにこの前眠りかけの時に、綺麗だとかなんとか口走ってしまったような…



「アンタって俺の顔が好きなのか?いつもじっと見てくるけど」



ほら、やっぱり。

お見通しだった。



「………だって、こんな美しい顔、石膏像以外にはじめてみたから…」



「石膏像…?」


「………つまり、私が出会った中で1番綺麗な人ってこと」


「…ふーん、モデルにでもなってやろうか」



「本当に?」と、思わず嬉々とした顔で彼を見ると、彼はふはっと吹き出した。



「はは、アンタ思ったより素直なんだな」



楽しそうに笑いながら、私の横をすり抜けて柳は部屋に上がり込む。



「だって…、正直、ずっと考えてたから…。あなたが近くにいれば、喜んで描きたいって…」



「へぇ」と、彼が悪戯っぽく笑う。

どうやら割とこの状況を楽しんでいるようだ。



「もしかして自覚ないの?」


「…中学の時コレのせいで男子校に転校させられた」