パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-


「だって、鈴木さんいつも…何考えてるかわからなくて…」



私は今、目の前のこの男の人に口説かれているの?

柳以外の人に、好意を寄せられて
私の体の中は色んな感情でぐちゃぐちゃだった。


一番は、柳への罪悪感。


独り言のようにこぼし、私は俯いた。


鈴木さんはとっても良い人だ。

彼の論文も、彼が考える美術に対する思いも、私は素敵だなと思っていた。


その気持ちがなおさら私を苦しめる。



「…これなら信じてくれる?」



それは一瞬のことだった。


鈴木さんの冷えた手が、私の顔に伸びてきて無理矢理上を向かせる。

そしてそのまま彼の顔へと引き寄せた。



「やっ…!」



咄嗟の判断で彼をの体を押し、彼の唇を手で塞ぐ。



「っやめて下さい!」



危うくキスされかけた彼から、体を遠ざける。

心臓がバクバクと音を立て、私の体を硬直させた。



「ざんねん」と、笑う彼の黒いは私を捉えている。


彼から爽やかな笑みは消え、妖艶な笑みへと変わって見えた。

これは、私が知っている鈴木さんではない。



「お人好しなきみにひとつ」



押しのけた腕を彼に掴まれ、手首がギュッと締め付けられた。



「君は何か勘違いをしている」



次第に強くなっていくその力に、私の心は焦りを含んだ。


ゆっくりと動く、彼の唇から目が離せない。


…鈴木さん?



「姫を攫ったのは、魔王じゃなくて王子だよ」



彼はそう言って私の腕を解放すると、私の横をすり抜け去っていった。