兄の車から降り立ち、そのまま電車に飛び乗った凪咲。土曜日のこの時間の上り列車はガラガラで、4人掛けの座席を独り占めしながら、あまり灯りの見えない窓の外の景色を眺めていたが
(どうしよう・・・。)
凪咲は困惑していた。果たして、兄の予言通り、もう駅への移動中に母親から電話が掛かってきて
『お父さんが、このままじゃ、鳳凰さんに顔向け出来んから、とにかくその彼氏とやらを、至急連れて来いってカンカンなのよ。鳳凰さんうんぬんはともかくとしても、私も大切な娘が、結婚を前提にしてお付き合いしている彼氏さんにお目に掛かりたいわ。来週あたりに是非、お連れしてよ。』
と言われてしまったからだ。
兄に看破された通り、現実にはそんな相手はいない。それどころか、はっきり言って、彼氏いない歴イコ-ル年齢だ。恋愛に興味がないわけでも、特別後ろ向きだったつもりもないのだが、そういう機会が訪れないまま、今日に到ってしまった。
(私に異性を惹き付けるような魅力がなかったんだろうし、逆に私を夢中にさせてくれるような人が現れなかったってことなんだろうな・・・。)
そんな自己分析が頭に浮かぶが、今はそれどころではなかった。
「仕方ないから、誰か気の置けない男友だちにでも、彼氏役を頼んだらどうだ?」
勉からは、そんな提案がされたが
(そんな人が居たら、苦労しないよ。)
男子の知り合いがいないわけではないが、そんなことを気軽に頼めそうな人物は当たり前だが、全く思い浮かばない。勝手にお見合いを組まれた上に、なんでこんなに苦労しなきゃいけないんだと憤る気持ちの一方で
(こんなことなら、お見合い受けるだけ受けてから、断った方が楽だったかな・・・?)
なんて思いももたげてきたが、あの父親の入れ込みぶりを見ると、お見合いをしたが最後、そのまま有無も言わせずにレールに乗せられてしまう危険性大。
(八方塞がりだよ・・・。)
家に帰ってからも、凪咲は頭を抱えるしかなかった。
そんな憂鬱な気持ちを引き摺りながら、週明けの勤務に臨んだ凪咲。仕事はいつものようにこなしてはいたが、その合間や休憩時間には思わずため息が出る。仕事が終わって、家に戻れば、まるで見計らったかのように、母親から電話が掛かって来て、いつ来るんだと矢の催促。
しまいには、会社の昼休みにも掛かって来て
「今、彼氏と予定調整中なんだから、もう少し待ってよ!」
とキレ気味に電話を切ったのはいいが
「えっ?彼氏って、凪咲、とうとう出来たの?」
声が大きくて、同僚に聞かれてしまい、途端に問い詰められる羽目となってしまった。
(どうしよう・・・。)
凪咲は困惑していた。果たして、兄の予言通り、もう駅への移動中に母親から電話が掛かってきて
『お父さんが、このままじゃ、鳳凰さんに顔向け出来んから、とにかくその彼氏とやらを、至急連れて来いってカンカンなのよ。鳳凰さんうんぬんはともかくとしても、私も大切な娘が、結婚を前提にしてお付き合いしている彼氏さんにお目に掛かりたいわ。来週あたりに是非、お連れしてよ。』
と言われてしまったからだ。
兄に看破された通り、現実にはそんな相手はいない。それどころか、はっきり言って、彼氏いない歴イコ-ル年齢だ。恋愛に興味がないわけでも、特別後ろ向きだったつもりもないのだが、そういう機会が訪れないまま、今日に到ってしまった。
(私に異性を惹き付けるような魅力がなかったんだろうし、逆に私を夢中にさせてくれるような人が現れなかったってことなんだろうな・・・。)
そんな自己分析が頭に浮かぶが、今はそれどころではなかった。
「仕方ないから、誰か気の置けない男友だちにでも、彼氏役を頼んだらどうだ?」
勉からは、そんな提案がされたが
(そんな人が居たら、苦労しないよ。)
男子の知り合いがいないわけではないが、そんなことを気軽に頼めそうな人物は当たり前だが、全く思い浮かばない。勝手にお見合いを組まれた上に、なんでこんなに苦労しなきゃいけないんだと憤る気持ちの一方で
(こんなことなら、お見合い受けるだけ受けてから、断った方が楽だったかな・・・?)
なんて思いももたげてきたが、あの父親の入れ込みぶりを見ると、お見合いをしたが最後、そのまま有無も言わせずにレールに乗せられてしまう危険性大。
(八方塞がりだよ・・・。)
家に帰ってからも、凪咲は頭を抱えるしかなかった。
そんな憂鬱な気持ちを引き摺りながら、週明けの勤務に臨んだ凪咲。仕事はいつものようにこなしてはいたが、その合間や休憩時間には思わずため息が出る。仕事が終わって、家に戻れば、まるで見計らったかのように、母親から電話が掛かって来て、いつ来るんだと矢の催促。
しまいには、会社の昼休みにも掛かって来て
「今、彼氏と予定調整中なんだから、もう少し待ってよ!」
とキレ気味に電話を切ったのはいいが
「えっ?彼氏って、凪咲、とうとう出来たの?」
声が大きくて、同僚に聞かれてしまい、途端に問い詰められる羽目となってしまった。


