ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~

「理沙さんは、もともと海外営業部にいて、常務とは知り合いだったみたい。『事情があったのは、知ってるけど、あなたが受付嬢なんかにされて、気の毒だと思ってたのよ。だから、人事部に掛け合って、あなたを秘書に貰い受けてあげたの。』って、恩着せがましく言われたそうよ。受付嬢に対する偏見は相変わらずで、その点はいくら諫言しても、全く聞き入れないって、理沙さんも困ってたよ。」


「それは・・・厄介ですね。」


貴恵の言葉に、思わず凪咲はため息交じりになる。


「本当にすみません・・・。」


「今はしょげてる場合じゃないよ、千晶。私たちがやるべきことは、私たちの存在意義、ウチのブースが有人でなければならない現実を常務に認めてもらうこと。ううん例え、常務が考えを変えてくれなくても、他の取締役や委員会のメンバ-にわかってもらえれば、こんなのは絶対に跳ね返せる。まだ、私たちの仕事は見直し対象に入っただけで、別に廃止と決まったわけじゃないんだから。」


2人に言い聞かせるように、貴恵は熱く語る。その言葉に


「そうですね、やりましょう。」


凪咲は力強く応えてみせる。


「よろしくね、菱見さん。千晶も合コンだのなんだので、チャラチャラしてる場合じゃないからね。しっかりしてよ。」


「は、はい。」


最後に一喝が入り


「では、本日も全力でよろしくお願いします。」


「はい。」


こうして始まった、この日のブ-ス業務は特に大きなトラブルもなく、時刻はやがて正午を過ぎ、朝からの来客の波が一段落したブースはアイドルタイムに入っていた。貴恵は昼休みで席を外し、凪咲と千晶は手持無沙汰のまま、座っていた。


「こういうところだけを見れば、受付なんて暇そうに座って、楽してるだけって思われても仕方ないよね。」


凪咲がそんなことを口走ると


「でも、私たちはここを離れられないわけですし、オンとオフがはっきりしている業務なんだから、オフの部分だけ見て、『お前らいらない』って言われても、困りますよね。」


そう言って、千晶が口を尖らせる。


「それにどこの部署だって、暇な時間って必ずありますよ。営業の人たちだって、外回りに出て、ずっと忙しく動き回ってるわけじゃないって言ってましたよ。」


「そうだね。私も前の会社の時、やることなくてネットサ-フィンしてたこと、何回もある。」


「私もです・・・ってネットサ-フィンって言葉、久しぶりに聞きました。」


「えっ、ネサフってもう死語なの?」


「ググるも、もう10代はほとんど使わないそうです。今はブラウジングって言うらしいです。」


「どういう意味?」


「・・・知りません。」


ここで顔を見合わせて、2人は思わず笑ってしまった。