ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~

「ところが、実際にはそんな簡単な話じゃなくなった。焦ったよ、でももっと焦ったのは、半ば冗談半分で提案した偽装同居を凪咲が受け入れてくれたことだった。」


「裕は冗談のつもりだったの?あの時のあなたの表情、結構マジだったと思うけど。」


「冗談半分っていうのは言葉が悪かったかもしれないけどさ。でも大して親しくもない男に同居しようって言われて、女性がうんって言うとは、普通思わないだろ?」


「酷い、私がはしたない女だって言いたいの?」


「い、いや。そう言うわけじゃないけど・・・。」


「あの時、私が頷いたのは、提案してくれたのがあなただったからだよ。」


「えっ?」


「確かに他にいい方法が見つからなかったこともあるよ。でも真面目で、誠実を絵に描いたような大城裕くんが、私の為に必死に考えて、提案してくれたことだから。大城くんなら信じられる、そう思ったからだよ。」


その凪咲の言葉に、ハッと息を呑んだ裕は


「凪咲は俺のことを、いや大城裕という男のことを本当に信じてくれてたんだな・・・。」


そう言って、思わず1つ息を吐いた。


「裕・・・?」


「あの偽彼氏の話が出た時点で、俺がその半年後に大塚を辞め、AOYAMAに入るというスケジュ-ルは、もう決定事項だった。そして、まずは1年間海外で勉強し、帰国したらすぐに婚約者と式を挙げることになるのもわかっていた。あの時、俺は凪咲に『結婚に興味がない』なんて言ったけど、現実の俺は意に沿わないとは言え、結婚というものを現実的なこととして意識せざるを得ない状況だったんだ。」


「ということは、私と暮らしてる間も、あなたは・・・婚約者さんと会ってたってこと?」


「ああ。」


頷いた裕に、表情を変える凪咲。思わず「最低」っていう言葉を口走り掛けて、慌てて飲み込む。果たして裕も


「はっきり言うけど、そのことについて、凪咲に対しても婚約者に対しても罪悪感を感じることは全くなかった。だって、俺たちの関係は所詮3ヵ月限定の「偽」だったんだから。」


と言い切った。


「じゃ、なんで、あなたはその偽装同居を、延長しようとしたの?なんの意味があったの?」


「それは・・・俺の気持ちが変わってしまったんだ。というより、本当の気持ちを抑え切れなくなったという方が正しいかな?」


「えっ?」