体育のバスケは、梨花がボールを持って、
転んで、ささっと敵チームに取られて、
ゴールが入ってしまっていた。

せっかく仲良し3人組でチームを組んでいたのに
活躍ならずだった。

「ごめんね、みんな。
 転んじゃうし、ゴールに入らないしで。
 本当に申し訳ない。」

美貴と恵麻はどんまいと言って励ましてくれた。

残りのクラスメイトの2人は、カースト上位の
派手目なお嬢様たちだった。

「別に、勝つ気も負ける気もねぇし。
 だるいから。」

「うちら、暇してたから。
 ねぇ。」

「あ、そうなんだ。 
 でも、ごめんねぇ。」

「……。」


 話が噛み合わない。
 謝っているのに受け止めらない2人だった。
 バスケはやりたくないのは、わかるけど
 こんなにあからさまにアピールされても
 嫌な気持ちが溢れてくる。

 先生がホイッスルを鳴らした。

 みな、整列にしに体育館中央に集まった。


「今日のところはここまで。
 みんなとても良い試合してましたね。」


 体育の先生はみんなを褒めていた。
 梨花たちはそこまで本気にやれてないことを
 残念に思えた。

「勝てなかったけど、まぁいいか。」

「そうだね。次は勝てるように頑張ろ。」

「うんうん。また同じチームだといいね。」

「本当、そう。」

 3人は向かい合って話していた。

 体育の授業を終えると体育館から
 校庭が見えた。

 男子は、バスケではなく、
 外で野球の試合をやっていた。

 バットでボールを打つ音が響いている。

 朔斗はあまり激しい運動は苦手としていたため、
 とりあえずベンチで見学しようとしたら、
 松岡広大に首根っこを掴まれて、
 ファーストの守備にまわされた。
 よりによって、ボールを受ける仕事が
 多いところで、朔斗が任された。

 みんながやりたくないところを任されたようだ。
 部員以外の野球好きは少なかった。
 ピッチャーとキャッチャーが 
 野球部に所属していた。


「俺、ファーストやりたくないんだけど。」

 ボソボソとしゃがんで、
 砂をいじいじしていると、
 早速ボールが飛んできた。
 タイミングよく、受け取って、
 一塁ベースに
 来たランナーをアウトにさせた。


「俺。できるな。」

 調子をつけてきた朔斗は、頭にポンとボールが
 当たってその場で倒れた。
 罰が当たったかもしれない。

「あー、やったな。朔斗。
 ぼんやりしてるから。」


 松岡広大が呆れた表情を見せた。


 遠くで見ていた梨花が、
 誰かが倒れているのを目撃した。

 
 まさかそれが朔斗だとは思わなかった。

 
****


 保健室で頭に氷を乗せていた朔斗は目を覚ました。

「うわ!」

「目覚ましたね。」

「うぉ、すいません。
 ここどこですか?」


「えっと…保健室よ。」

 養護教諭の齋藤先生が答えてくれた。


「俺って、ボールが頭にあたったんですよね。
 グローブに入ってなかった気がします。」

「ノーコンってことね。
 お疲れさん。」


「そういうわけじゃ…。」

 朔斗は手を振っていいわけを探す。

 ガラッと、保健室のドアが開く。